- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/05/08
- メディア: 単行本
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桐野夏生氏の新刊。朝日新聞で2005年11月28日から2006年12月21日まで連載されたものの単行本化です。
とりあえず、
- 桐野夏生氏の作品はとりあえず買う(←私がこれです)
- 派遣業の実態について知りたい
という人は買う価値があると思います。
しかし小説自体を楽しみたい人には、この作品はすすめられません。というのも、作品全体として見た場合、『メタボラ』の完成度は低いと思うからです。正直、これが桐野氏の作品だとは思えないほどです。
もちろん、個々のシーンの描写力などはさすがに優れていると思います。
しかし、小説全体としてみた場合、構成は破綻しています。
主人公の過去の話、準主人公の位置づけを与えられる男性をめぐる話、沖縄での選挙の話など、『メタボラ』ではいくつもの話が平行して進みます。それなのに、それぞれの話が小説内で結びつきません。
作者も最後は疲れてしまったのか、それらを結びつけることもせず、適当に話を終わらせてしまっています。結果として、作品を通して作者が何を描きたかったのかが見えてきません。この記事を書くために、私も内容の要約をしようと試みたものの、作品の構成が散漫なためにまとめることができませんでした。
新聞連載ということで、構成がある程度破綻してしてしまうのは仕方ないにしても、単行本化に際して、もう少し手を入れることはできなかったのでしょうか。残念です。
『柔らかい頬』や『グロテスク』のような作品を、また桐野氏が書いてくれることを期待したいです。