西洋中世研究、創刊号

むしろ、たとえばデカルト哲学にみるとおり、概念の操作方式は、あきらかにスコラ学にもとづいたものであり、それを理性という通路におきかえたと断言できるともいえる。(樺山紘一、「中世はいかにして発明されたか」)

 「断言できるともいえる」ってなんだよ。

 それはともかく樺山紘一氏による「中世はいかにして発明されたか」という論考からはじまる『西洋中世研究』の創刊号です。

 冒頭の樺山論文には、人文主義者が中世という概念に到達する事はなかったという驚きの断言もあります。これどういう意味で言っているのかいまいちはっきりしないのですけど、文字通りに理解してもいいなら事実に反しますよね。

 あと中世という概念が古代や近世を定義した後でないと定まらないということから、中世はメタ概念であると言っていますけど、メタっていう言葉はこういう時に使うのが適切なんだろうか。

 山本芳久氏による研究動向論文については、すでにアダムさんが触れている通りです*1。19世紀から話を起こした関係で、いちばん新しい研究群について触れる余裕がなくなってしまったのかも。

 甚野尚志氏の「12世紀ルネサンスの精神」は勉強になりました。おすすめ。