東京大学,「研究成果の国際的発信」に関する調査結果

 東京大学は2007年度後半から,「東京大学の国際化の方向性や重点施策」について教職員や学生から意見を聴取してきました.この調査のうち,教職員向けに行われたものの結果がネット上で公開されています.しかし残念ながら現時点では学内からしか閲覧できないようです.また同じ結果が学内広報に掲載れているものの,広報など学外で入手するのは不可能でしょう.

 というわけで,調査結果のうち「研究成果の国際発信」に関係する部分を抜粋しておきます.

  • あなたはご自身の研究成果を何語で主に発信していますか?
理系 文系
全体 66% 34%
主に日本語 13% 87%
日本語が英語より多い 49% 51%
日本語と英語半々 80% 20%
英語が日本語より多い 86% 14%
主に英語 83% 17%
その他 0% 100%

 なんて変な発表の仕方をするんだ.この表が意味するところは以下のとおりです.アンケートに答えた人全体のうちで,理系の教員が66%,文系の教員が33%をしめます.この人たちの中で「主に日本語で発信している」と答えた人を抽出すると,そのうち理系が13%,文系が87%をしめることになります.以下同じ要領で,たとえば「主に英語で発表している」と答えた人のうちでは,理系が83%,文系が17%を占めることになります.

 どうせなら理系と文系を分けて,それぞれのうちで「主に日本語が何%」,「主に英語が何%」とやってくれればよかったのに.

 いずれにしても,調査結果に記載されているとおり「理系は英語,文系は日本語による発信が多い」ということになりそうです.

 続いて,「研究成果の国際的発信に関する主に文系からのコメント」というコーナーがあります.これも一部抜粋.

 文化を扱う学問の場合には,言語の違いだけでなく,研究の伝統や問題意識,観点などもすべて異なるから理解してもらうことは容易ではない.このため,研究の国際発信の重要性を認識しつつも,自分の研究を優先してしまい,海外発信は二の次になりがちである.
 少し手を加えれば海外でも高く評価されるであろう論文が日本語のまま数多く放置されている現状は残念であるが,個人の努力では解決しない.論文を外国語に翻訳したり,それを海外の流通ルートにのせるサポートをシステマティックにやってくれる機関をつくることは有用である.(強調原文)

「国際的発信=英語による発信」と同義ではない.国際的発信の必要性が分野ごとに異なる.