Schütze, Die Naturphilosophie in Girolamo Cardanos De subtilitate
- 『カルダーノ「精妙さについて」の自然哲学』 Ingo Schütze, Die Naturphilosophie in Girolamo Cardanos De subtilitate (Munich: Wilhelm Fink, 2000).
カルダーノの自然哲学を論点ごとに丁寧にまとめている研究です。とても使い勝手がよいです。『精妙さについて』を読まずに手っ取り早くカルダーノを理解した人におすすめ。
議論を呼びそうな点として、カルダーノの哲学における形相の重要性についての解釈があります。
カルダーノの哲学では形相の役割が天の熱に取って代わられているため、形相概念が実質的には意味を失いつつあるという解釈が100年以上前からあります。しかしSchützeはカルダーノが真空恐怖などの事象を形相を用いて説明していることから、カルダーノが形相の役割を軽視していたと考えるのは間違いだと主張しています。
私としては、Schützeが挙げる事例では確かに形相が重要な役割を果たしているものの、やはりカルダーノの自然哲学では形相の役割は大きくはないと考えています。そこがスカリゲルの癇にさわったのでしょう。
もう一つはカルダーノの哲学におけるヒポクラテスの重要性について。ヒポクラテスはカルダーノにとって権威ではあった。しかし彼自身が学説を練るにあたってヒポクラテス文書が重要な役割を果たしたとは考えられないというのがSchützeの立場です。