Paire, Cardano, De subtilitate, 1巻から4巻のフランス語訳

  • 「ジロラモ・カルダーノの『精妙さについて』の最初の4巻の校訂、翻訳、注解」 Maïlis Paire, "Édition traduite et commentée des quatre premiers livres du "De subtilitate" de Jérôme Cardan," (PhD. diss. University Lyon III, 2004).

 頼んでいたものがようやく届きました。製本もされていないバラバラの状態で送られてくるのかと思いきや、案外しっかりと綴じられています。PDF化するためにはむしろ綴じられていない方が便利なのですが仕方ありません。

 肝心の内容についてですが非常に使えます。特に翻訳部分が細かく分割されて、分割された諸部分のそれぞれに内容を指示する小見出しがついているのが素晴らしい。これで『精妙さについて』のどこで何が論じられているかがわかるようになりました。同書を読んだことがある人なら分かるでしょうけど、これは画期的すぎます。まあ最初の4巻だけなんですけど!

 解説の部分も、魂、天使、発生について書かれている部分を読んだ限りではよくできているように思えます。なんだか素人臭い注(元素の語源を説明したり)があったりしますけど、それでも全体としてはカルダーノが『精妙さについて』で論じていることをかつてないスケールでまとめてくれています。弱点としてはカルダーノ以外の論者をあまり見ていないこと、そして『精妙さについて』以外の著作、特に神学的な内容を含むものを見ていない点でしょうか。いずれにせよ解説部分についてはもう少ししっかり見てみないといけません。

[追記]

 カルダーノが神を力に置き換えようとしているというのは明らかに言い過ぎ。彼は神と神の力を区別しようとしている。

 あと翻訳部分を読んでいて気がついたのですけど、カルダーノは『精妙さについて』では人間の魂が心臓にあると述べています。それに対比される形で天の魂は天の至る所にあると書かれています。しかし『一者について』では「魂は世界の中にあるがごとくに我々の中にある」と書かれています。どうもある場所では人間の魂は心臓にあるといって、ある場所では体全体にあると言っているように見えます。これはやはり矛盾と考えるしかないのかな。