桑木野、建築的記憶術、あるいは魂の究理器機

  • 桑木野幸司、「建築的記憶術、あるいは魂の究理器機 初期近代の創造的情報編集術とムネモシュネの寵児たち」『思想』1026 (2009)、27-49頁。


 イェイツとロッシの作品以来、欧米では記憶術に関する研究が大幅に進展したにもかかわらず、日本ではその進展が的確に紹介されていない。したがって代表的な先行研究を紹介しながら記憶術研究の諸テーマを概観する。その上で、論文後半では記憶術と建築の関係を、デル・リッチョ、ロッセッリ、デッラ・ポルタ、ジェズアルドの著作を題材に検討する。

 これが本論文の大まかな流れです。肝心の後半部分が駆け足となってしまい、題材の面白さを提示することなく終わってしまっているのが残念でした。にもかかわらず修辞的に凝った表現が多用されていて、表現と内容のあいだに不釣り合いがあります。前半の先行研究紹介(これ自体は非常に有用)は割愛し別の場所にまわし、後半の作品分析を深めるべきでした。