ヤハロム・勝又版『タハケモニ』

  • Tahkemoni, or the Tales of Heman the Ezrahite by Judah Alharizi, ed. Yosef Yahalom and Naoya Katsumata (Jerusalem: Ben-Zvi Institute, 2010), 686+lv pp.

 高橋英海さんの研究室に分厚い本が届いていました。どうやらすごいものが出てしまったようです。編者の一人は勝又直也さん。私には内容を評価することはまったくできません。京都大学のウェブページから内容紹介を抜粋するにとどめましょう。

中世スペインの代表的なヘブライ語詩人であるイェフダ・アルハリーズィーは、1165年スペインのトレドにて生まれ、1225年シリアのアレッポにて死にました。彼が、アラブ散文文学における代表的なジャンルであるマカーマート(アル・ハリーリーのものが有名)に倣って、独自にヘブライ語で創作したのが『タハケモニ』であり、これは中世ヘブライ散文文学における最高傑作といって間違いありません。

数多くの写本群が世界中に散在しているなど文献学上の困難もあり、これまで『タハケモニ』には学術的な校訂版が存在しませんでした。日本文学における『源氏物語』にも匹敵する重要性を持つこの作品の校訂版の出版は、「現代のユダヤ民族にとっての喫緊の文化的使命」(テルアビブ大学ヨセフ・サダン教授曰く)であったわけです。我々の8年間にもわたる共同研究が、このたびのヤハロム・勝又版『タハケモニ』出版という形で完結したことに、大変喜びを感じています。

『タハケモニ』の50 の物語は、それぞれ興味深いテーマを扱っており、全体として中世地中海・中東世界の百科事典の様相を呈しているといえます。特に、1.物語自体の滑稽さ、2.当時流布していた哲学、科学、神学的要素の導入、3.全く新しい文脈での聖書の句の利用、といった点を味わっていただければと思います。