秋山、『ハンガリーのギリシア・カトリック教会』

ハンガリーのギリシア・カトリック教会―伝承と展望

ハンガリーのギリシア・カトリック教会―伝承と展望

 非常に興味深く、また貴重な研究書が出されました。著者の秋山さんは西洋古典学を専攻し、その博士論文を『教父と古典解釈:予型論の射程』として出版している人です。彼が数年前からハンガリーキリスト教を研究対象としていたことは知っていました。しかしまさかこのような大著が現れることになるとは。

 基本的には既刊の論文を集めたものとなっています。目指すところについては冒頭で筆者が述べてくれているので引用しましょう。

本書は、わが国ではまだほとんど知られていないと思われる「ギリシアカトリック教会」について、特にハンガリーの場合を例にとり、その歴史的沿革・教会法的基盤・典礼・神学などを考察紹介することをまず目的としたものである。

 さてギリシアカトリック教会とは果たしてなんでしょう?カトリックと言えば、ローマ・カトリックなのでは?そう考える人はぜひ本書を手に取ってみてください。

 冒頭で言われていることとは裏腹に直接的にハンガリーの事例を紹介しているのは、冒頭の5つの賞と一つの補論であり、残りの部分はその他の領域をあつかっています(ただし第10章はハンガリーもの)。たとえばそれはアレクサンドリアのクレメンスであったり、私が知らない江戸時代の日本の仏教学についてだったりします。

 私はまだベッサリオンが登場する数カ所を読んだにとどまりますけど、ハンガリー史に詳しい人からの書評を期待したいところです。