複数のアリストテレス主義 Schmitt, Aristotle and the Renaissance

Aristotle and the Renaissance (Martin Classical Lectures)

Aristotle and the Renaissance (Martin Classical Lectures)

  • Charles B. Schmitt, Aristotle and the Renaissance (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1983), 10–33.

 チャールズ・シュミットの『アリストテレスルネサンス』から、「Aristotelianisms」という考え方を導入したことで知られている第1章を読みました(10–33頁)。何度読んでも発見がありますね。

 レオナルド・ブルーニがはじめたアリストテレスの文献学的、歴史学的な読解方法は、16世紀になるころには少なくとも倫理学関係の著作が論じられるさいには広く受けいられるようになりました。一方論理学や自然哲学の領域ではスコラ学的な方法が生き残り続けます。とはいえ人文主義的な手法をまったく受けつけなかった人物は少数でした。これら2つの傾向は様々な程度で相互作用をしていたとみなされるべきです。

 人文主義とスコラ学の方向性の違いは、15世紀以降利用が広まっていたり、新たに利用可能になったりしたアリストテレス注釈への態度の違いとしても現れました。15世紀終わりからアヴェロエスの著作が新たにラテン語に訳されはじめると、人文主義的傾向を持つアリストテレス読解者はアヴェロエスへの反発を強める一方で、当時これまた新たに利用可能となっていた古代のギリシア人註釈家の著作を好んで用いました(「私たちの時代はアラビア人たちの教えを軽蔑し、それを今や言いうなれば踏みつけて、ギリシア人たちの宝物庫から運ばれてきたと分かっているもの以外は何一つ受け入れも尊敬もしない」)。これに対して二フォやザバレラというスコラ学の伝統に連なる人々はアヴェロエスギリシア人註釈家も分け隔てなく用いています。

 プロテスタント圏でアリストテレス主義が衰退したということはなく、むしろ1550年から1650年までのあいだはカトリック圏でよりもプロテスタント圏でのほうが盛んにアリストテレスが読まれていたとすらいえます。全体的にイタリアのカトリック論者の著作はプロテスタント論者の論考よりも自然主義的な傾向を示していました。またプロテスタント圏ではカトリック圏で生産された著作が盛んに研究される一方で、その逆はほとんど起きませんでした(なぜかは分かっていません)。宗教への態度も個々のアリストテレス主義者によって大きく異なります。アリストテレスの釈義とキリスト教の教義との関係に関心を払わない人物から、そこを議論の中心にすえるものまで様々な種類の立場がありました。

メモ スコトゥス主義