- Edward P. Mahoney, "Philosophy and Science in Nicoletto Vernia and Agostino Nifo," Scienza e filosofia all'Universit〓 di Padova nel Quattrocento, ed. Antonino Poppi (Trieste: Edizioni Lint, 1983), 135-203.
マホーニィの続き。これまた長尺の論文です。表題からは分からないものの、実はヴェルニアとニフォの宇宙論が扱われています。この領域についてのルネサンスアリストテレス主義たちの見解を取りあげた研究というのは少なくとも英語圏ではそれほどないので、この論文は非常に便利なものです。例によって羅列的にいろいろ書いてあるので、読む人の問題関心によって学べる点も異なってくるでしょう。私にとって興味深かったのは以下の点です。特に天の知性は厳密には理性的とは言えない、という論点はこの前の学会でアダムさんの発表に対してあった指摘と重なるものかな。
- アヴェロエスの『自然学大注解』の第4巻テキスト71番でアヴェンパケの理論が解説されている(139)
- ヴェルニアによれば最外天球を動かしているのは知性であり神ではない(149)。
- ヴェルニアは1483年にアリストテレス、アヴェロエスの校訂版を出す(151)。
- 天が質料と形相から成るのかという問題(151-155)。ヴェルニアはアヴェロエスの意見を支持しているらしいが、マホーニィの説明からはどうしてこれがアヴェロエス支持なのかは分からず。スカリゲルには近い気がする。
- 天の質料が地の質料と同じであるというアヴィセンナの意見はスカリゲルと同じか。これはGiles of Romeも支持していた意見のようだ。
- ヴェルニアは1490年代の初頭からギリシア人注釈家に言及を開始している。
- ニフォは『破壊の破壊』への注解のなかで、アリストテレスに時間的創造の学説を帰したアリストテレス主義者を攻撃している(184)。
- 天における質料と形相についてのニフォの議論(188-189)。dimensioは質料とcoeternalである(189)。→東論文
- ニフォによれば天の知性はdiscursive knowledgeを持っていない。よってそれが理性的と呼ばれるのはequivocalな意味でのみ(194)。
- ニフォは天が第五元素からなるという見解を支持していた(197)。
- ニフォによる世界の秩序論(198-200)。アルベルトゥスにしたがっているようだ。
- パドヴァにいた時代にニフォはヴェルニアから刺激を受けギリシア人注釈家を学習するようになったに違いない(202)。15世紀末からの自然哲学分野でのギリシア人注釈家の利用はアリストテレス主義にとってターニングポイントだった。