ESM2011年3号から本の紹介

 先日届いたEarly Science and Medicineの最新号(2011年3号)に収録された書評を読みました。8冊の本が書評されています。以下の5冊が興味深そうです。

  • Anna De Pace, Niccolò Copernico e la fondazione del cosmo eliocentrico : con testo, traduzione e commentario del Libro I de Le rivoluzioni celesti (Milan: Mondadori, 2009).
    • 『天球回転論』の第1巻を扱った研究書です。同書での議論の進め方がプラトンの『国家』と『パイドン』からコペルニクスが学んだ方法に基づいているという主張を展開しています。


 この論集に収録されたLeinsleの論文は読まねばなりません。ディリンゲンにあったイエズス会の大学で書かれた博士論文の分析から、カルダーノとスカリゲルの自然哲学の受容の実態を明らかにしようとするものです。書評者によれば、スカリゲルによるカルダーノ批判が、公には検閲にかかっていないカルダーノの学説を批判するために利用されていました。この際にスカリゲルの学説はその哲学の全体的構図からは切り離して取り出され、カルダーノの哲学の問題あると思われた部分が広まるのを防ぐために利用されました。スカリゲルの受容についてのミクロストリアということでこれは見逃せません。

William Petty: And the Ambitions of Political Arithmetic

William Petty: And the Ambitions of Political Arithmetic

 これはフランシス・ベイコンの受容を追ううえで避けて通れない研究のようです。

Selling Science in the Age of Newton: Advertising and the Commoditization of Knowledge (Science, Technology and Culture, 1700-1945)

Selling Science in the Age of Newton: Advertising and the Commoditization of Knowledge (Science, Technology and Culture, 1700-1945)

 ポピュラーサイエンスや科学における物質文化の研究はよく進んでいるけれど、知識人たちがどのように自分たちの知識を公衆に売り込んだかということはあまり研究されていないということで、1660年から1730までの新聞と雑誌に掲載された科学知識を売り込む広告類を研究しています。

The Zodiac of Paris: How an Improbable Controversy over an Ancient Egyptian Artifact Provoked a Modern Debate over Religion and Science

The Zodiac of Paris: How an Improbable Controversy over an Ancient Egyptian Artifact Provoked a Modern Debate over Religion and Science

 こちらの黄道帯の制作年代についての論争を扱った研究書です。とても面白そう。