ガレノスのデミウルゴス
- 「ガレノスの知識世界におけるデミウルゴスと皇帝」Rebecca Flemming, "Demiurge and Emperor in Galen's World of Knowledge," in Galen and the World of Knowledge, ed. Christopher Gill, Tim Whitmarsh and John Wilkins (Cambridge: Cambridge University Press, 2009), 59-84.
ガレノスが世界に秩序を付与している神を名指すためにデミウルゴスという表現を用いたのはなぜかという問題に答えようとする論文です。といっても、この点に関する明確な回答はかかれていません。書かれていることは第一に、当時のローマ世界ではガレノスが唱えるような強い目的論がエリート層では広く受け入れられていたということです。よって、ガレノスの摂理論・目的論に特定の哲学学派からの影響を読み取る必要はかならずしもない。第二にガレノスが提示しているデミウルゴス像が、当時の皇帝像と合致しているのではないかという推定です。つまり世界を摂理を持って統治しているという点で、皇帝もデミウルゴスも同じであると。
後者の指摘は面白いですけど、思いつきの域をでないと思います。それよりも前者の指摘が重要でしょう。ガレノスとアフロディシアスのアレクサンドロスが摂理を説明するために同じようなスキームを持ち出すところからして、当時の知識人たちのあいだで学派を超えた共通の摂理観が浸透していたと考えられます。
Galen and the World of Knowledge (Greek Culture in the Roman World)
- 作者: Christopher Gill,Tim Whitmarsh,John Wilkins
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2009/12/10
- メディア: ハードカバー
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