ニュー・バーレスクを知っていますか?

 みなさんはニュー・バーレスクを知っていますか?おお、知っていますか。いやそれなら話ははやいです。でもこんなブログにたどり着いてしまうような人生を過ごしてきた人の大半は、「New Burlesque?なにそれBurley(こいつ)が生まれ変わってちょっと変身したの?」的な感想を持つんじゃないかと思います。

 そこでこのたび北村紗衣ことさえぼうが書いたこの論考ですよ。え、「いや『ニュー・バーレスク研究入門』って研究以前にまずはニュー・バーレスクがなんなのかを教えてくれ」ですか?大丈夫、ちゃんとニュー・バーレスクっていうのがなんなのかも簡単に書いてあります。

 ニューというからにはニューでない単なるバーレスクがありまして、現代のバーレスクの走りは1860年代にアメリカでちょっと女性の色気を強調したショーをしたトンプソンという人にあるらしいです。これ以降北米や欧州で女性が脱衣しながら(あるいは脱衣した状態で?)ダンスするショーがはやってこれが現代バーレスクだそうな。その特徴は「じらし」にあるらしい。つまり・・・見えそうで見えないとかそいうことなのか?よく分らぬ。

 現代バーレスクは1960年代くらいまでは流行っていたけれどいろいろあってすたれてしまいます。でも90年頃からそれをリバイバルさせようっていう動きが起こって、ニュー・バーレスクがはじまりました。その特徴は2つあって、一つは昔の偉大なパフォーマーとかへの何らかの参照を頻繁に織り交ぜるというノスタルジー色が濃いことです(ってどういうことでしょうね?)。もう一つは脱衣ダンスなんだから当然異性愛者の男性もターゲットなんだけどそれだけじゃなくて、女性とか同性愛の男性もターゲットに入っている点です。

 このリバイバルは成功しているみたいで各地でパフォーマンスが行われるだけでなく、バーレスク祭り的なものも開かれているらしいです。さえぼうがロンドンで開かれていたのに行ってましたな。それだけじゃなくてバーレスクについての映画ができたり、ミュージックビデオにバーレスクパフォーマーがでたり(デビュー以前バーレスクダンサーとして働いていたレディ・ガガのものとか)して、その表現媒体がどんどん広がっているのです。「このような幅広い人気と他分野への広がりを考慮すると、ニュー・バーレスクは今後の大衆文化におけるパフォーマンスを検討するにあたって見逃せないものとなるだろう」。

 ニュー・バーレスクの紹介としてはこういうことが書いてあります。とにかく基本は女性による脱衣ショーなんだけど、単にそれは異性愛者男性の視線にあわせてつくられているんじゃなくて、もっとこう自由で挑戦的で面白いものになっているんじゃないでしょうか(たぶん)。でも同時に女性が脱衣して踊るんだから、それは性的搾取につながりかねない、というか性的搾取そのものなんじゃないか。女性による主体的な挑戦に見えて、結局彼女たちは異性愛者男性がその性的視線を通じて行使する規制を自ら内面化しているに過ぎないんじゃないかという疑いがついてまわります。このジレンマはニュー・バーレスクパフォーマーや観客の一部、そしてニュー・バーレスクを研究対象にしている研究者たちに抱かれているものです。

 とまあいろいろ書いてきましたけど、とにかくあなたが少しでもニュー・バーレスクに関心を持っているなら、あるいは万が一この記事を読んで関心を持ってしまったなら、とりあえずはこのさえぼうの論考を手に取るのがいいです。研究紹介も親切にできていて、写真集(「『初学者』がニュー・バーレスクの概要を知るに適した資料であると言える」らしい!)とかデータ・ブックとかパフォーマーのための実用書とかがまず挙げられています。そのあとの研究紹介もスタンダードなものから、最新の研究論文までかなり網羅的にとりあげられていて(まあそんなにまだ研究ないんだけど)、要約もポイントをうまくおさえてなされています。こういうのさえぼううまい。とにかくニュー・バーレスクに入るならここからでしょう。

 でも本当にニュー・バーレスクに入りたいならやっぱりニュー・バーレスクに行かないといけないかもしれない。だって「観客とパフォーマーの相互反応が醍醐味の一部」なんだから。