形而上学の再定式化 Lohr, "Metaphysics" #3

The Cambridge History of Renaissance Philosophy

The Cambridge History of Renaissance Philosophy

  • Charles Lohr, "Metaphysics," in The Cambridge History of Renaissance Philosophy, ed. Charles B. Schmitt and Quentin Skinner (Cambridge: Cambridge University Press, 1988), 537–638.

 話はさらにローマのイエズス会とスペインの大学教育にうつっていきます(605–20)。ロヨライエズス会の哲学においてはアリストテレス、神学においてはアクィナスにしたがうように指示してしました。しかし世俗的アリストテレスによってアリストテレス哲学とキリスト教の教義が両立するかどうかが問題となったため、イエズス会士たちはその両者を調和させることを可能にする新たな形而上学を自分たちの学問の土台として探求することになりました。ベニト・ペレイラ形而上学を二つの分野に分割しました。最初のものは存在をあつかう第一哲学とされ、二番目のものは神学とか普遍学とか呼ばれ、神や知性や人間霊魂を扱うとされます。この前者の区分はのちに存在論と呼ばれるようになるものです。

 一方スペインでは論理学と自然哲学への過度な集中が見られることから、従来神学部のカリキュラムに含まれていた形而上学の科目を学芸が組むに入れようという教育改革が起こりました。その結果、形而上学の体系書が数多く著されることとなりました。スアレスの『形而上学討論集』はそのような教科書の一つでした。スアレスペレイラとは異なり、形而上学の統一性を強調し、それは神を含む全存在者を扱うものだと主張しました。

 これら神学者、哲学者たちはすべての学問の基礎を存在の学としての形而上学に置くことで、中世以来の現実の静的で階層構造的な理解(そして聖職者の特権を温存する世界観)を守ろうとしていたとされます。