批判的哲学史のはじまり

Models of the History of Philosophy: From its Origins in the Renaissance to the ‘Historia Philosophica’ (International Archives of the History of Ideas   Archives internationales d'histoire des idées)

Models of the History of Philosophy: From its Origins in the Renaissance to the ‘Historia Philosophica’ (International Archives of the History of Ideas Archives internationales d'histoire des idées)

  • 作者: C.W. Blackwell,Philip Weller,Giovanni Santinello
  • 出版社/メーカー: Springer
  • 発売日: 2010/12/15
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  • Giovanni Santinello and others, Models of the History of Philosophy: From Its Origins in the Renaissance to the “Historia Philosophica” (Dordrecht: Kluwer, 1993), 120–24.

 1979年から2005年にかけて5巻にわたってイタリア語で出版されてきた哲学史の歴史についてのシリーズの第1巻(の英語訳)です。第2巻の英語訳が2011年に出されています。他の研究書では扱われないようなマイナーな人物たちについての比較的詳しい記述があって重宝します。

 パガニノ・ガウデンツィオ(Paganino Gaudenzio, 1595–1649)は、ガリレオの同時代人でピサ大学の修辞学教授をつとめていました。彼が残した『教父たちの哲学的見解について De veterum ecclesiae patrum philosophicis pronuntiatis』(1644年)では、哲学というのはユダヤ人に由来する神的な学問であり、それがエジプト人ギリシア人に伝えられたとされました。もちろんギリシアのすべての哲学者がモーセユダヤ人が残した文書から知を得ていたわけではありません。しかし少なくともプラトンモーセ五書を読み、その学説をヘブライ人から受け取っていたとされます。とはいえヘブライ人からギリシア人に伝えられる過程で、真理が歪められてしまったことも確かです。なのでどのギリシア哲学の学派が正しいかどうかをめぐって論争するのは意味がありません。「しかし今日私たちはプラトンアリストテレス、ゼノン[ストア派]、デモクリトス[原子論]の学派について互いに激しく議論している」。

 もう一つの代表作(『ローマ人のもとで哲学の始まりとその発展 De philosophiae apud Romanos initio et progressu』)ではローマの哲学が論じられています。彼は大学ではアリストテレスとその註釈家たちに偏った学習が行われているし、それのみならず過去の哲学を歴史的に検討する視線を同時代の人々は欠いていると考えました。そこで彼は歴史的文脈に十分配慮した新しい哲学史に取り組むと宣言します。それは「これまで私が知る限り、誰もこのようなことを明らかにするためにペンを取ることはなかった」ような事業でした。彼はローマの哲学史を、ロドスのパナイティオスにはじまり、ルクレティウスキケロで頂点をむかえるものとして記述しました。

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