ヒポクラテス文書『腺について』の受容 Craik, "The Reception of the Hippocratic Treatise on Glands"

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

  • Elizabeth Craik, "The Reception of the Hippocratic Treatise On Glands," in Blood, Sweat and Tears: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe, ed. Manfred Horstmanshoff, Helen King and Claus Zittel (Leiden: Brill, 2012), 65–82.

 初期近代におけるヒポクラテス文書の受容を扱った論文を読みました。ヒポクラテス文書の『腺について』は16世紀にラテン語に訳されて以降もあまり活用されることはありませんでした。これは初期近代に腺についての解剖学的知見が飛躍的進展を見たことからすると奇妙なことのように思えます。なぜ『腺について』は多くの場合無視されていたのでしょう。医師の多くはヒポクラテス文書に実践的な知見を求めていました。短く印象的なパッセージもなく理論的で難解な『腺について』は彼らのニーズに合致していなかったと思われます。しかも医師たちの多くは、直接『腺について』にあたるのではなく、他の誰かの報告なり引用なりを通じて同書にあたっていたことがわかっています。その結果として『腺について』の特定の箇所が集中的に引かれることになります。こうして全身にくまなく行き渡る腺という同書の全体的な構想は見過ごされたのです。