- 作者: Manfred Horstmanshoff,Helen King,Claus Zittel
- 出版社/メーカー: Brill Academic Pub
- 発売日: 2012/06/01
- メディア: ハードカバー
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- Frank W. Stahnisch, "The Tertium Comparationis of the Elementa Physiologiae. – Johann Gottfried von Herder’s Conception of “Tears” as Mediators between the Sublime and the Actual Bodily Physiology" in Blood, Sweat and Tears: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe, ed. Manfred Horstmanshoff, Helen King and Claus Zittel (Leiden: Brill, 2012), 595–626.
ヘルダーの持病と彼の生理学理論を関連させて理解しようという論文です。生まれつきヘルダーの右目涙管はうまく機能しておらず、そこから来る症状に彼は悩まされていました。この病気を治すために医学部に当初入ったものの、解剖実習に耐え切れず、すぐに哲学・神学研究に転身します。26歳のとき医師にかかって手術を受けたものの、かえって症状が悪化してしまいます。結局彼は終生右目に悩まされることになります。このような彼の症状は、その生理学理論にも反映されていると考えられます。彼は当時の最先端の生理学理論であったハラーの学説を受け入れていました。しかしヘルダーはそこにハラーには見られない考察を加えます。涙は確かに生理学的な現象ではあるけれど、それには心理学的な意味もあるというのです。涙やその他の行動に現れている感情というのは、それを通じて人間霊魂が神と交流するということの証であるとされます。こうして涙に現れている感情というのは、肉と霊という人間の二重の本性が密接不可分に調和していることのあらわれとして理解できることになります。しかし本当に著者がいうように、この理論をヘルダーの持病と結びつけることができるのでしょうか?