肺を通る血液 Brömer, "The Nature of the Soul and the Passage of Blood through the Lungs"

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

  • Rainer Brömer, "The Nature of the Soul and the Passage of Blood through the Lungs. Galen, Ibn al-Nafīs, Servetus, İtaki, ‘Aṭṭār," in Blood, Sweat and Tears: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe, ed. Manfred Horstmanshoff, Helen King and Claus Zittel (Leiden: Brill, 2012), 339–62.

 ガレノスは心臓の左心室と右心室を隔てている心中隔に小さな孔があり、そこを通って右から左へと静脈が流れると考えていました。この誤った見解がミカエル・セルヴェトスやレアルド・コロンボよって否定され、代わりに肺循環という正しい理論が提唱されたことは医学史上よく知られています。しかし彼ら以前にも肺循環説を唱えていた人物がおり、それがイブン・アル・ナフィースです。とはいえ彼は解剖によってこの結論に到達したのではなく、霊魂の不死を保証するような生理学理論を築きあげるなかでこの理論に到達したと考えられます。イブン・アル・ナフィースの著作をセルヴェトスが知っていたかどうかはいぜんとして議論があります。いずれせによセルヴェトスの議論もまた三位一体の学説を否定するという彼のモチーフのうえに築かれていたことを忘れてはなりません。イブン・アル・ナフィースの学説はオスマン朝では忘れ去られていたと言われてきたものの、近年の研究は心臓の小孔を否定する彼の考えが(必ずしもいつも正確にとは言えないものの)オスマン朝の医学者の知るところであったことを示しています。