カトーの結婚と情事 ルーカーヌス『内乱 パルサリア』#2

内乱――パルサリア(上) (岩波文庫)

内乱――パルサリア(上) (岩波文庫)

我らをあらゆる国の敵となしたまえ。そうして、避けさせたまえ、
内乱だけは。

 第2巻を読みました。カエサルルビコンを越え、ポンペイウスがローマを退いたことで、都は恐慌状態に陥ります。ある親がマリウスとスッラの虐殺が荒れ狂う恐怖の時代を語り、しかしそれよりなお大きな災いがローマにもたらされるのではないかと危惧します。その後は謎の展開により小カトーが前妻と再婚する結婚式の模様が描写されます。それは非常に簡素なもので「額を締める、聳える塔のような花環を戴く新婦が、閾(しきい)をまたぐ際、足裏が触れるのを避ける姿(turritaque premens frontem matrona corona/ translata vitat contingere limina planta)」も見られなかったそうです。なにこの習慣?ちなみにカトーは「かつての婚姻の床で巫山の夢を果たすことはなかった。その固い志操は正当な愛さえ退けたのだ。…愛の唯一の必要性は子孫を残すことであった」そうです。おおう、表現が難しい。これの前半部分のラテン語は "nec foedera prisci sunt temptata tori"なので、直訳すると「かつての情事というきずなが試みられることはなかった」。ということは「かつて妻と行っていた情事を再婚に際して再開することはなかった。…愛の唯一の必要性は子孫を残すことであった(から)」くらいの意味でしょう。うむ、厳粛である。いやなぜカトーの情事にこんなに私はこだわっているのか。そんなことを気にしているあいだにもカエサルは攻めてきているというのに。