ウィリアムズの文章指南 「センテンスの改稿」 『シカゴ・スタイル研究論文執筆マニュアル』より

シカゴ・スタイル 研究論文執筆マニュアル

シカゴ・スタイル 研究論文執筆マニュアル

  • ケイト・L・トゥラビアン『シカゴ・スタイル研究論文執筆マニュアル』沼口隆、沼口好雄訳、慶應義塾大学出版会、2012年、153–172ページ。

これより重要な執筆の原則はない。すなわち、古い情報は新しい[情報]の前に置き、よく知られた情報は、よく知られていない情報を先導する。(164ページ)

 この本の原型は1937に出されたようです。それに繰り返し改訂と増補が加えられて出来上がった2007年版が、このたび日本語に訳されました。そのなかから第11章「センテンスの改稿」を読みました。ジョセフ・M・ウィリアムズが執筆を担当した箇所であり、彼がさまざまな場所でスタイルについて述べていることが凝縮されています。「読者にとって既知の情報を短い主語としてなるべくはやく導入し、その主語の行為を明示する動詞をなるべくすぐ続ける」。基本的な要請にはこれに尽きます。しかしこれは効きます。ウィリアムズの助言にしたがうと、不器用に乱発されていた分詞と譲歩節の大半が使えなくなります。これらを排除して、代わりに主語と述語のセットを思い切りよく導入するためには、前文との内容的・論理的関係をなんとなくではなく厳密に確定する必要があります。こうやって文章を接続することで段落が自然と構造化され、論述文にふさわしいスタイルが生まれます。おまけに作業前には案外いけると思っていた自分の考えが実はぜんぜんたいしたことがないということが分かってげんなりする。いや最後の部分は私だけかもしれないですけど、とにかく英語で論述文を書こうとする人(書いている人)はぜひ。だまされたと思って。