血液凝固論の伝統 Haak, "Blood, Clotting and the Four Humours"

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

Blood, Sweat and Tears -: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe (Intersections Interdisciplinary Studies in Early Modern Culture)

 血液凝固についてはヒポクラテス文書、アリストテレス、ガレノスに記述があります。しかし古代の著述家たちが血液が凝固するさまを実際にたとえば試験管に入れるなどして実験的に観察したという証拠はありません。血液凝固の際に生じる諸々のレイヤーと四体液説をはじめて関連付けたのはアヴィセンナの『医学典範』でした。このリンクは以後繰り返し論じられます。19世紀の医師がこのリンクを古代に由来するものとしたとき、彼が実際にたどっていたのは古代ではなく中世に由来する伝統だったのです。近年では中世での血液凝固論は、炎症性の病気に罹患しているか妊娠した人物からとられた血液に関しては妥当なものであることが明らかになっています。