- 作者: Manfred Horstmanshoff,Helen King,Claus Zittel
- 出版社/メーカー: Brill Academic Pub
- 発売日: 2012/06/01
- メディア: ハードカバー
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- Daniel Schäfer, "More than a Fading Flame: The Physiology of Old Age between Speculative Analogy and Experimental Method," in Blood, Sweat and Tears: The Changing Concepts of Physiology from Antiquity into Early Modern Europe, ed. Manfred Horstmanshoff, Helen King and Claus Zittel (Leiden: Brill, 2012), 241–66.
近代以前に老化がどういう方式で説明されていたかを概観した論文です。老化についての生理学的説明は、古代よりアナロジーに依拠して行われていました。たとえば植物が萎れて枯れるのと同じように人間も老化するとすると、水分の枯渇がその原因と考えられます。アリストテレスが老年を油が切れたランプにたとえていることは、油の枯渇が体内の水分の枯渇を指示すると同時に、燃料の枯渇により弱まった炎が体内の熱の弱まりを指示すると解され、ここから老年は乾いていると同時に冷めていると観念されるようになります。燃焼のたとえばその過程で生じる燃えかすのような不要物の存在を連想させ、体内でも何らかの不要物の蓄積が老化を引き起こすと考えられました。この他にも老化は腐敗や発酵作用の停止から説明されたりしました。以上のアナロジーはみな自然からとられたものです。1650年以後はデカルトによる身体を機械とみなす学説にしたがって、老化を機械の動作不良にたとえて説明することがなされるようになりました。これらのアナロジーから出発した諸説明モデルについて、その相互の整合性をどうとるか、そのモデルと他の自然哲学の学説をどう調和させるか、そのモデルから引き出される老化のメカニズムをどう押しとどめるか、というようなさまざまな探求がなされることになります。
本筋とは関係ないのですけど、男性の方が女性より長生きするというアリストテレスの断定を統計的に覆す試みが1748年頃にあらわれているようです。