- 作者: 海老沢有道
- 出版社/メーカー: 創文社
- 発売日: 1978/03
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- 海老澤有道『南蛮学統の研究 近代日本文化の系譜』増補版、創文社、1978年、27–89ページ。
戦国時代のキリシタン文化に関する基本的な研究書です。今では古びてしまっている叙述もあるものの、これが1958年に書かれていたのかと感嘆させられます。キリシタン宣教師が来日したころの日本の天文知識はきわめて低い水準にありました。天文知は一部の貴族の独占物でしたし、中国で天文学が占星術・陰陽道と結合した結果として、天体現象への関心が吉兆占いを主目的とするものに限定されていました。ここに現れたイエズス会士たちは、自分たちが日本人よりも合理的ですぐれた自然に関する知識を持つと宣言します。この知識からは唯一の創造神の観念を証明することができる(「創造主のあることを自然の道理をあげて説き…」34ページ)。しかもこの知識は合理的であるので、日本人、特に知識人階級である仏僧を説得し、改宗を促すことができる。日常的な天文現象を説明することで民衆の心をつかむことができる。こう宣教師たちは考えました。その後キリスト教は禁止され、科学研究、天文暦学の発展は大きく妨げられることになります。しかしそれでもキリシタンが与えたインパクトから出発点として江戸時代における天文学の継続と発展が起こります。