- 作者: J.P.ヴェルナン,吉田敦彦
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1970
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「都市の危機、最初の賢人たち」と題された第5章を読みました。ギリシアは紀元前7世紀末から6世紀にかけて危機を経験します。人口の増加により食物の不足が起こりました。こうしてギリシア人たちは土地、食物、そして金属をもとめて海外交易に向かうことになります。海外貿易の隆盛はそれにたずさわる有力貴族を富ませました。都市に住まう彼らと農民階級の間で対立が起こります。ギリシアではこの不平等が温存されることを認めず、平等な構成員からなる共同体を組織しようとする動きが生まれました。ヘシオドスがいうところのディケ(正義)に基づいた統治が目指されたのです。この動きの最初の明確なしるしは法の分野で起こりました。市民の殺害が全市民への罪であるとされたのです。これは最初強く宗教的な志向性をもった人々によって導入された刷新でした。しかしひとたび導入されるとそれは世俗化され、理性的な思惟を促進することになります。とくに都市の裁判では証拠と証言にもとづき真実(らしきもの)を追求する営みと化し、これが客観的真理概念の形成に一役買うことになります。