ラディカルな啓蒙からの出発 加藤喜之インタビュー参加記

 今日はネットインタビュー「加藤喜之、アメリカでの研究生活と今後の活動を語る!」に参加しました。科研費プロジェクト「西欧ルネサンスの世界性と日本におけるキリシタンの世紀」(代表:根占献一;http://kaken.nii.ac.jp/d/p/25284022.ja.html)の一環としてほぼ月一ペースで提供されているウェブ企画の第3弾となります。

 番組はyoutubeにアップロードされています。興味のある方はぜひどうぞ。とりあえずこのグーグルハングアウトオンエアによる多元中継の未来感を堪能してください。こんな手軽に離れた場所同士を結びつけて放映できるうえに、動画としてyoutubeに格納できるなんて、この機能の出現前には考えられなかったことです。複数の研究者が参加するプロジェクトの成果発表のひとつの形態として、ハングアウトオンエアを使った放送がより広く活用されるとよいと思います。

 番組で加藤さんに話してもらったことのなかでは、やはり彼の研究がジョナサン・イスラエルの『ラディカル・エンライトメント』から出発していたという話が印象的でした。哲学・科学での議論の水準から一段下がった、よりジャーナリスティックな水準でのスピノザ思想をめぐる論争を追ったイスラエルにたいし、加藤さんはその論争的テーゼを受けながら、哲学・科学固有の水準に焦点を合わせ、そこでのスピノザ主義の同定のされ方、およびその反駁のされ方をよりテキストに深く入り込みながら解明したということでした。そのときに方法論としては、オランダ系のスピノザ(主義)研究に接近して、神学者・哲学者の論述が向けられていた同時代の脈略を可能なかぎり視野に収めようと試みたのでした。

 こうしておそらく加藤さんはイスラエルが描き出した巨大な絵のうちに(少なくともイスラエルの構想からすると相対的に)小さな楔を打ち込んだのだと思います。この楔が他の同じような楔とあわさっていくことで、ラディカルな啓蒙の描像がいかに組み換えられていくのか。楽しみです。 

関連書籍

Radical Enlightenment: Philosophy and the Making of Modernity 1650-1750

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