- 作者: Paul J. J. M. Bakker,Sander W. de Boer,Cees Leijenhorst
- 出版社/メーカー: Brill Academic Pub
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: ハードカバー
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- Lorenzo Casini, "Juan Luis Vives and Early Modern Psychology: Critical Reappraisal," in Psychology and Other Disciplines: A Case of Cross-Disciplinary Interaction (1250-1750), ed. Paul J.J.M. Bakker, Sander W. de Boer, and Cees Leijenhorst (Leiden: Brill, 2012), 81-105.
ヴィヴェスは霊魂の本質ではなく、その働きを探究するようすすめた。これは経験に基づいた新たな霊魂論の提唱として高く評価されてきた。だが著者が言うに、ヴィヴェスのこの主張はむしろ従来の哲学の延長にあった。そこでは事物の真の本質は知りえないとされていた。なぜなら人間の知識は感覚から出発せねばならず、感覚できるのは本質そのものではなく、その働きだけだからである。このペシミスティックな認識論を、ヴィヴェスはアリストテレスだけでなく、ガレノスやプラトンに基づいても展開している。霊魂の本質探究を断念しその働きに着目せよというのはこの認識論の帰結であった。
本質(形相)が原理的に知りえないというのは、中世から初期近代にかけての哲学がとらわれていた一大問題であった。パスナウの大著の主題はこれである。また私も『知のミクロコスモス』に寄稿した論考の結論部でこの問題に触れた。