科学における革命の認証 Cohen, Revolution in Science

Revolution in Science

Revolution in Science

  • I. Bernard Cohen, Revolution in Science (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1985), 213–28.

 科学史における「革命」概念を論じた基本書から、「18世紀における科学革命の概念」と題された章を読む。フォントネルは1727年の著作の序文で、ニュートンライプニッツによって導入された無限小の計算は、「幾何学で起きたほぼ全体的な革命の時代」を画すると論じている。この革命は幸せなものだともいう。フォントネルはこのように、数学の領域での循環的ではない revolution の存在を認めていた。だが革命を経験したのは数学に限定されており、生物学はもちろん物理学も革命の過程から除外されている。この時点では、ニュートンライプニッツの数学ほどには、デカルトニュートンの自然哲学がひろく受けいれられていなかったということを意味するのだろう。

 18世紀なかごろにもなると、ニュートンが自然哲学の領域で革命を引き起こしたということはひろく認められるようになる。たとえば『百科全書』の序文でダランベールは、デカルトが準備した革命をニュートンが完成させたと論じている。同じような認識は、『百科全書』のその他の項目でも確認できる。この後は、科学の領域での革命の存在はひろく認められ(ただしなにを革命とみなすかについては多様な見解があった)、科学者自身と科学の歴史記述者の双方が自分や他人の起こした革命について語るようになった。1811年にはアカデミー・フランセーズの辞書のうちに、科学や技芸の分野での革命という意味が記載されるようになる。こうして科学研究における変化を革命として記述することが、公的な認証をえたのであった。