Vickers, Invocation and Assent #2

  • Jason E. Vickers, Invocation and Assent: The Making and Remaking of Trinitarian Theology (Grand Rapids, MI: Eerdmans, 2008), 58–67.

 順番が少し前後するけれど、Vickers本のまとめの続きである。

 1630年代からソッツィーニ主義の文献がイングランドで広まりはじめた。理性に基づいて聖書を読むというソッツィーニ主義の方針は、ChillingworthやLaudの方針と似ていた。事実Chillingworth, Tillotson, Stillingfleetらは、ソッツィーニ主義者として批判された。

 しかし、彼らが実際にソッツィーニ主義者のように三位一体を否定していたわけではない。そもそも彼らはソッツィーニ主義の反三位一体論の議論の詳細を知らなかった。当時はソッツィーニ主義の文献を入手することは困難だったからだ。

 80年代の中盤から後半にかけて状況が変化した。宗教上の自由と寛容を認める傾向が強まり、86年以降ソッツィーニ主義の文献が大量に出版された。

 これを受けてカトリック神学者たちは、プロテスタントをソッツィーニ主義と関連付ける効果的な論法を見出した。理性に反するからという理由で実体変化を拒絶するプロテスタントの主張は、最終的に三位一体の否定につながることをソッツィーニ主義は立証しているというのである。この批判を受けて、プロテスタント神学者たちは反三位一体論と対峙せざるを得なくなった。その帰結が1690年代の三位一体をめぐる論争である。

 これを読むとVickersは、やはり80年代に明確な転換点を見ているようである。90年代の三位一体論争も、直接的にはこの転換点の帰結として捉とらえている。