スピノザと預言者 James, Spinoza on Philosophy, Religion, and Politics

 

  • Susan James, Spinoza on Philosophy, Religion, and Politics: The Theologico-Political Treatise (Oxford: Oxford University Press, 2012), 49–60.

 本書でSusan Jamesは、スピノザが『神学・政治論』を様々な神学的、政治的な論争に介入することで構成していたとした上で、スピノザが論敵に反対するなかで構築したアーギュメントに体系的な説明を与えることを目指している(5ページ)。

 本書の49ページから60ページの "The limits of revealed knowledge" と題された節でSusan Jamesは、スピノザ預言者は高い推論能力ではなく豊かな想像力を持っていたのだから、彼らの述べていることを哲学的な真理として受け取る必要はないとしていたとしている。Jamesはさらに、ここから預言者の発言を自然哲学上の真理として受け取るべきではないとスピノザがしている点では、彼は新奇な主張をしているわけではないという。Jamesは、スピノザが新奇なのは、この結論を自然哲学を超えて、数学や歴史、さらには擬人化された神についての預言者の発言にも拡張して、預言が権威を持つ領域を極めて小さく見積もった点にあるという。