- Piet Steenbakkers, "Das Wort Gottes und die wahre Religion: Das Fazit von Spinozas Bibelkritik (Kapitel 11–12)," in Baruch de Spinoza: Theologisch-politischer Traktat, ed. Otfried Höffe (Tübingen: Akademie Verlag, 2014), 127–137.
この論文の前半部でPiet Steenbakkersは、スピノザは当時の新約聖書に関する文献を広く読んではいなかったと主張している。その根拠としてSteenbakkersは、スピノザがマタイ福音書と、おそらくはヘブライ人への手紙が、元々はヘブライ語で書かれたというのが一般的な見解だと述べている点を挙げる。Steenbakkersによれば、このような見解は17世紀にはほぼ見られない。例外はサンディウスの『教会史の核心』(1669年)であり、そこではマタイが福音書をヘブライ語で書いたとされている。この著作をスピノザは所有していた。またSteenbakkersは、スピノザが聖書をラテン語で引く際に、ウルガタ訳ではなく、1569年のイマヌエル・トレメリウスの版から引いていることに注目する(スピノザはこの版を所有していた)。そこでトレメリウスは新約聖書をアラム語[シリア語ペシタ]からラテン語に訳していた。明言されてはいないものの、Steenbakkersはこの版の使用もまた、スピノザの新約聖書のギリシア語はヘブライ語的であり、また部分的には元来ヘブライ語であったという考えを後押ししたと考えているようだ。このように少数の文献だけに見られる考えをスピノザが支持していることから、Steenbakkersはスピノザの文献調査は広範なものではなかったと結論づけている。