『事物の本性について』 1. 26-61.

それは私の友人であるメンミウスのためだ。彼をあなたは、女神よ、飾り立てて、常に万事につけて人に優っていることを望んだのだ。だから私が述べることに、女神よ、永遠の魅力を与えたまえ。

しばらくの間は、残酷な戦争の任務が、海でも陸でもすべて鎮まり休止するようにしたまえ。あなただけが静かな平和をもたらして、死すべき者たちを喜ばせるのだから。

というのも戦の残忍な任務は好戦的なマルス神が支配する。彼は恋の永遠の傷に打ち負かされて、しばしばあなたの膝に体を預けるのだ。

そして滑らかな首をうしろにそらしてあなたを見て、あなたにうっとりしながら、女神よ、愛で貪欲な目の保養をする。後ろに身を倒した彼の息は、あなたの口にかかっている。

彼をあなたは、女神よ、あなたの神聖な体で休んでいる彼を上からおおってやり、口から心地よい言葉を注ぎたまえ。そうしてローマ人のために、栄えある方よ、静かな平和を求めるのだ。

なぜならこのように祖国が不穏な時であれば、平静な心でいるということは私にはできず、メンミウスの名高い子孫もこのような状況では国を助けないわけにはいかないから。

というのも、神々の本姓というのは、すべてそれ自身で独立して、私たち人間のやっていることからは遠くはなれ、最高の平和と共に、不死なる時を楽しんでいるはずだからである。

なぜなら、神々の本性は、あらゆる悲しみや危険と無縁で、自らの持つもので満ち足りており、私たちを必要とはせず、つまらないことにとらわれたり、怒りで我を忘れはしないものなのだ。
[欠落あり]
〔メンミウスよ〕これから私が述べることについては、耳をかっぽじって、賢明な心を心配事からは離して真なる教えに向かわせるのだ。

あなたのために、常と変わらぬ熱意を込めてここに用意した私の贈り物を、理解する前に軽蔑して捨ててしまうことがないように。

なぜなら、あなたのために天や神々の最高の理法について私は述べはじめようとしているのだし、事物の元となっているもの―そこから自然はすべてのものを生み出し、増やし、養い、またそこへと同じ自然が滅びたものを分解する―について明らかにしようとしているのだから。

このはじまりとなるものを、説明するときには、素材、ものごとの生成する体、ものごとの種子と私は呼ぶことにし、また同じものについて第一の体という言葉も使うようにする。なぜならそこを最初として、すべてのものが生まれるからである。

【テキストと注釈にはTiti Lucreti Cari De rerum natura libri sex / edited with prolegomena, critical apparatus, translation, and commentary by Cyril Bailey.を使っています。】