フラパパゼミを準備していてよく分からなくなった点

1.
 ジョン・マレンボン『後期中世の哲学 1150-1350』加藤雅人訳 (勁草書房, 1989), 59-60に

メルベケのギョムは新プラトン派の人々のアリストテレス註解の多くを翻訳した。そのうち、最も影響力の強かったのは、シンプリキオスの『デ・アニマ註解』の翻訳であった

とあるのですけど、本当でしょうか。Dictionary of Scientific Biographyで、メルベケのギョムが訳したシンプリキオスの作品として挙げられているのは、『カテゴリー論注解』と『天体論注解』だけになっています。CHLMPを見てもそんな感じですし。
 そもそもシンプリキオスの『霊魂論注解』ってラテン語訳されたことがあるのでしょうか。訳されたとしたらいつごろ?
2.
 Dictionary of Scientific Biographyのメルベケの箇所に、メルベケが訳した作品のリストが載っています。そこにアフロディシアスのアレクサンドロスからの翻訳について書かれています。
 アレクサンドロスの注解作品としては、『気象論注解』と『感覚について注解』をメルベケは訳しているようです。
 注解ではないオリジナル作品の訳についての箇所には、次のように書かれています。

De fato ad imperatores and De fato, which is De anima, bk. II (authorship authenticated by the surviving Greek manuscript owned by Moerbeke and carrying his autograph title of possession) [P. Thillet, Paris, 1963]

 ええっと、アレクサンドロスには『運命について』と『魂について』という二つの作品があって、それらがラテン語訳では両方『運命について』というタイトルで訳されているということでしょうか。
 De fato ad imperatoresのほうはThilletの校訂で手に入れることができそうですけど(webcat情報)、De fato (=アレクサンドロスDe animaの2巻?) の方は校訂されていないのかなぁ。
 あとアレクサンドロスの『魂について』にはhttp://plato.stanford.edu/entries/alexander-aphrodisias/
を見る限りでは
Fotonis, A. P., 1980, The De anima of Alexander of Aphrodisias. (Translation and commentary). Washington, D. C.: University Press of America.
という英語訳があるそうなのですが、この作品本当に出ているのでしょうか。出版社のサイトに行っても見つからないのですが…。でもこの記事を書いているのはフレーデだ。
 調べると
Alessandro di Afrodisia, L'anima, traduzione, introduzione e commento a cura di Paolo Accattino e Pierluigi Donini (Roma, 1996). (ISBN 8842048437)
というイタリア語が出てきました。prokoptonさんが持っていなければ日本にはないのではないかと…。

3.
http://spot.colorado.edu/~pasnau/research/danotes.html

に『霊魂論』へのアヴェロエスの中注解(のラテン語訳)が、写本でひとつ残っているとあります。アクィナスの『霊魂論注解』の英語訳を作っている研究者が書いているので、多分間違いない情報だと思います。で、この中注解写本、どこの写本なのでしょう。校訂されてはいないと思うのですが…。

 いや、中世哲学研究者にとっては常識の範囲内の話だと思うのですが、外側から見るといろいろ錯綜していて混乱します(汗)。あまりに眠いので以後の調査は月曜日以降に。。。