ジョルジと三位一体とヘルメス書
ジョルジ*1の『世界の調和 De harmonia mundi』(ヴェネツィア、1525年)を調べました。
彼はこう書いています。
Quam trinitatem etiam Hermes sub enigmate sphaerae docet, dum ait: deus est sphaerica: cuius centrum, id est, pater est ubique; per suam potentiam: curciumferentia vero iam sapientia, et filius dei nusquam: quia capi non potest, et omnia circumplectitur: ut in eodem Ecclesiastico legimus: Gyrum caeli circiuivi sola, et in profundum abyssi penetravi. Relatio vero mutua utriusque; centri videlicet, et circumferentiae spiritum et amorem reciprocum resignat.
この三位一体についてもヘルメス〔・トリスメギストス〕は球の謎にしたがって教えている。彼は次のように言う。神は球である。その中心はすなわち父であり、その力能によってあらゆる場所にいる。
一方、〔球の〕境界はいまや知恵であり、神の息子であり、それはどこにもいない。というのもそれをとらえることは不可能であり、かつそれはすべてのものを包摂しているからである。
このことについては先に引いたのと同じく「シラ書」で次のように述べられているとおりである。「〔知恵のセリフ〕私はたった一人で天空を巡り歩き、深遠の深みに達した(24章5節)」。
一方、両者、すなわち中心と教会の両者の間のお互いの関係は聖霊と相互の愛を明らかにしている。
えええ。そんなことヘルメス文書に書いてありましたっけ。
ヘルメス文書でsphereという単語が登場するのは、Scott版の英訳ページ数でいうと、129, 137, 147, 177, 195, 221, 249, 251, 267, 273, 325, 329, 331, 369になります。私が調べた限りでは。
でもこれらのsphereって一箇所を除いてはすべて「天球」の意味なんですよね。その一箇所も別に上でジョルジが述べていることとは関係ないし。
というわけでヘルメス文書で、神、子、聖霊が球にたとえられている箇所なんてあるのかな、というのが今の疑問です。
〔追記〕
id:Freitagさんにお尋ねしたところ、ここでジョルジが言及しているのは『24人の書』という偽書ではないかという指摘をいただきました。瞬間的に答えが返ってくるのがすごいです。
『24人の書』については校訂と翻訳が出されています。
- Francoise Hudry (ed.), Liber viginti qvattvor philosophorvm (Turnhout, 1997).
学内配送であさってには届くと思います。
しかしこうなるとこの点についてクザーヌスの影響を指摘しているMahnkeの議論は怪しくなってきますね。で、そうなると私の原稿も書き換えないと…。彼はカッシーラも愛用していて信用できる研究者だとは思うのですけど、いかんせん古いので影響関係の議論の典拠として用いるのには無理があるのかもしれません。
〔さらに追記〕
ジョルジについてid:Freitagさんが文献紹介をされていました。