Newman, Promethean Ambitions, Francis Bacon
Promethean Ambitions: Alchemy And the Quest to Perfect Nature
- 作者: William R. Newman
- 出版社/メーカー: Univ of Chicago Pr
- 発売日: 2005/08/15
- メディア: ペーパーバック
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1200年から1700年までの,西洋での自然と技術の関係を扱った著作です.今回は序文とフランシス・ベーコンを扱った部分を読みました.
ベーコンによれば,自然であれ技術であれ,物体を変化させるためには,質料を拷問するように働きかけないといけません.それこそ質料を無に帰してしまうことを目指すくらいまでに.このため質料が外部に逃げられないように設計された場所や,女性の体内のような密閉された場所が,物質の変化には最適な場所とされます.
このようにベーコンの物質論の基本には,物質が何らかの形で変質するという考えがあります.ニューマンはこの考えを中世以来の錬金術の伝統に関連付けています.
ここで考えなくてはならないのは,このような変質の理論がベーコンの原子論とどのように関係しているかです.実はベーコンは原子が一定数集まると変質すると論じていて,この点が考察の手がかりになるのではないかと思われます.この考察を押し進めることで,ベーコンの物質論を『事物の本性についての考察』(1611年執筆)から『森また森』(1624年執筆)に至るまである程度統一的に理解できるのではないかと期待されます.ちなみに原子が集まることでこれまでとは違う性質を帯びるというのは,後にゼンネルトやガッサンディによって発展させられる考えでもあります.