14, 15世紀イタリアでの霊魂の不死性をめぐる攻防

The Universities Of The Italian Renaissance (Johns Hopkins Paperback)

The Universities Of The Italian Renaissance (Johns Hopkins Paperback)

  • Paul F. Grendler, The Universities of the Italian Renaissance (Baltimore: Johns Hopkins University Press, 2002), 267–313.

 「自然哲学」と題された章を読みました(267–313頁)。大学教育で用いられていたアリストテレスの著作、古代ギリシア人注釈家の復興、霊魂の不死性の問題、大学におけるプラトン哲学講座の設立と消滅、最終的なアリストテレス自然学の衰退。これらの基本的論点が手際よく整理されています。

 ここでは霊魂の不死性の問題について。イタリアの大学では医学教育が栄えていたために哲学者たちは霊魂と身体の関係に大きな関心を払っていました。また神学部がないか、あったとしても非常に小さかったため、哲学者たちは自分たちの領域を神学から切り離されたものと考えることができました。これは神学が栄えていたパリ大学ではできなかったことです。

 このためイタリアの大学では人間の霊魂の問題に自然主義的に接近する傾向が生まれます。パルマのブラシウス(c. 1350–1416)は人間の知性活動は身体に依存するのだから、人間霊魂もまた身体が消滅するとともに消滅すると考えました。15世紀の終わりにはニコレット・ヴェルニアがアヴェロエスの知性単一説に接近し、霊魂の不死性を証明することは不可能だと主張しはじめます。これを受け1489年3月4日にパドヴァ司祭であるピエトロ・バロッツィが知性単一説について公の場で議論することをパドヴァ大学の教員と学生に禁止する布告を出しました。この布告の背景には復興したプラトン主義、とりわけフィチーノアヴェロエスの知性単一論を批判していたこと、托鉢修道会の学識者たちが霊魂の不死性が証明可能であると考えていたこと、そしてイタリアには信仰主義を取るオッカム主義者たちがいなかったことが考えられます。特に托鉢修道会の影響力は、1442年にトマス主義形而上学教授職、74年にスコトゥス主義形而上学教授職、76–77年にスコトゥス主義神学教授職、そして1490年頃にトマス主義神学教授職がパドヴァ大学につくられていたことにより増大していました。たとえばアントニオ・トロンベッタ(1431–1517)はスコトゥス主義形而上学パドヴァ大学で教えており、上記の布告の作成に協力していました。

 布告のせいか、プラトンの著作を読んでか、どちらの要因によるのかは不明ですが、とにかく布告後にヴェルニアは自説を撤回することになります。しかしパドヴァの哲学者たちはバロッツィのような司祭からは信仰に反するとしか思えない学説を教えることをやめませんでした。彼はスコトゥス主義神学教授職の俸給を上げることを要求したとき次のようにいっています。「〔スコトゥス主義神学教授職は〕世界の永遠性、知性の単一性、無からは何も生じないといった誤謬に対する薬のようなものです。これらの誤謬は哲学者たちのあいだで溢れかえっており、これ〔神学教授職〕なしでは、この〔パドヴァ〕大学では異教徒の大学でもまた教えられていること以外は何も教えられていないということになるでしょう」。

 ついに第五回ラテラノ公会議で霊魂の不死性に関する決議が下されます。1513年12月19日にくだされた決定では人間の霊魂に関する重大な誤謬、すなわちそれを可死的とみなしたり、あるいはすべての人間に共通であるとみなしたりすることが少なくとも哲学的には認められるといった誤謬について次のように宣告されました。

大学やその他の場所で公に教えているすべての哲学者たちに次のように命じる。哲学者たちの原理なり結論なりを聴衆に話したり説明したりするとき、それらの原理や結論が真なる信仰から逸脱していると知られているときは(たとえば霊魂の可死性、霊魂は一つしかない、世界は永遠であるといった種類の断定)、全力をもって聴衆たちにキリスト教の真理を明確にするようにつとめねばならないし、それを説得的な議論でもって教えなければならない(もしそれが可能である場合)。そして全力で哲学者たちによる反論を論駁しなければならない。なぜならそのためのあらゆる方策が利用可能なのだから。

 哲学の自由を制限しようとするこの布告はしかし効力を持つことはありませんでした。この布告の直後にポンポナッツィが霊魂の不死性は哲学によっては証明できないと唱えることになります。こうして哲学は神学、形而上学から独立し自律性を高めていくことになります。

 さて、最後の結論はそうそうたる研究者たちが口をそろえて唱えていることですけど本当なのでしょうか?私は少し違う考えを持っています。