パドヴァ大学におけるスコトゥス

  • Edward P. Mahoney, "Duns Scotus and the School of Padua around 1500," in Regnum Hominis et Regnum Dei, ed. Camille Bérubé, 2 vols. (Rome: Societas Internationalis Scotistica , 1978), 2:215–27.

 1480年から1510年ごろにかけてのパドヴァ大学スコトゥスがどう読まれていたかを検証した論文を読みました。イタリアに印刷技術がもたらされると、哲学者や神学者たちは自分たちが奉ずる哲学者・神学者の著作集を校訂して印刷にかけようと熱心に取り組みました。スコトゥスの出版にはアントニオ・トロンベッタ(フランシスコ会)、Thomas Penketh(アウグスティヌス修士会)、Maurice O'Fihely(フランシスコ会)らがこの作業にあたります。パドヴァで活動した哲学者たち、たとえばニコレット・ヴェルニア、ピエトロ・ポンポナッツィ、アゴスティノ・ニフォ、マルカントニオ・ツィマラは利用可能になったスコトゥスの著作集を読み込み、彼の学説に通暁していました。議論の対象としばしばなったのは、共通本性、形式的区別、このもの性を通じた固体化、霊魂の不死性の証明可能性、神に関する直観知識といった問題でした。これらの哲学者がスコトゥスに是々非々の姿勢で臨んだのにたいして、ドミニコ会のカイエタンとPietro Trapolinは、スコトゥスを激しく批判していました。この他Geronimo Taiapetra, Cristoforo Marcello, Gabriele Zerboがスコトゥスに言及していることからも、彼の著作が広く読まれていたことが分かります。パドヴァアリストテレス主義を理解するためにスコトゥスの存在を見逃すことはできません。