ルネサンスにおける霊魂の不死性

The Cambridge Companion to Renaissance Philosophy (Cambridge Companions to Philosophy)

The Cambridge Companion to Renaissance Philosophy (Cambridge Companions to Philosophy)

  • 「霊魂の不死性」Paul Richard Blum, "The Immortality of the Soul," in Cambridge Companion to Renaissance Philosophy, ed. James Hankins (Cambridge: Cambridge University Press, 2007), 211–233.

 ルネサンス哲学の最新の概説書から霊魂の不死性の問題について扱った章を読みました。フィチーノにはじまり、ヴェルニア、トロンベッタ、ポンポナッツィ、ポンポナッツィの敵対者(ニフォなど)、スアレスデカルト、デガベ、マルブランシュの議論が通覧されています。前半部に関する限り、霊魂の不死性を説く側には新プラトン主義傾向を認め、逆に可死性を認める側にはアリストテレス主義的認識論への依拠を認めるという二分法が機能しているように思えます。フィチーノやニフォ(ポンポナッツィに反論したときの彼)のような人物は、不変の真理の存在を担保する知性的領域(イデア界のようなもの)を前提にして、そこに人間の知性は参与しているのだから不死なのだと議論を組み立てます。対してポンポナッツィは感覚印象から知が獲得されるという認識論の枠組みにしたがって、身体と霊魂の不可分性(よってその可死性)を唱えたとされます。経験から出発するという点ではデカルトもポンポナッツィと同じです。彼は霊魂が思惟するものであることは経験から証明でき、かつそれは延長であるところの身体とは異なるのだから、身体が滅びることによって霊魂が滅びることはない。したがって霊魂は不死なのだと主張しました。ポンポナッツィによる「経験上は霊魂の不死性は証明できない(そしてその証明は信仰の領域である)」という議論が、デカルトにより「経験上は霊魂が(身体と同じように)死ぬとは証明できない」という議論に反転させられているのを見てとることができます。

メモ