15世紀末の死の技法

叢書『アナール 1929-2010 歴史の対象と方法』 2 〔1946-1957〕

叢書『アナール 1929-2010 歴史の対象と方法』 2 〔1946-1957〕

 1951年に『アナール』誌に掲載された論文を読みました。1465年から1500年にかけて書かれた「往生術[死の技法]」とジャンルを分析することで、生と死、および来世についての大衆のとらえ方を明らかにしようとするものです。1465年から80年にかけての「往生術」冊子では、死というのはそこにおいて天使と悪魔の超自然的な戦いが繰り広げられる場としてとらえられています。死にゆくものは神と和解することで魂の救済をえねばなりません。

 これに対して1580年以降の「往生術」、たとえばヤコブ・ド・ユーターボクの『良く死ぬための術について』では、死というのは現世における倫理的生き方を指示するような転換点としてとらえられています。この生き方とは免罪符(贖宥状)を買ったり、教会に寄付をしたりするというような慈善活動であるとされています(「私は今のところ、われわれの罪を償う手段として贖宥よりもよいものを知らない」)。一方サヴォナローラによればよく死ぬためには常に死のことを意識して生きねばなりません。「ときおり自分の肉体と手を見なさい。そしてこう言いなさい。『手と肉体は灰燼に帰すことになるだろう。それらはたちまち腐臭以外の何ものでもなくなってしまうだろう…』」。

関連書籍

Reforming the Art of Dying: The ars moriendi in the German Reformation (1519?1528) (St Andrews Studies in Reformation History)

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