カルダーノ家のデーモン Giglioni, "Fazio and His Demons"

  • Guido Giglioni, "Fazio and His Demons: Girolamo Cardano on the Art of Storytelling and the Science of Witnessing," Bruniana & Campanelliana 16 (2010): 463–72.

 カルダーノの守護霊論を彼の父親から理解しようとする論文です。「私は長いあいだ守護霊の存在を信じてきたが、それが私の身に迫る出来事をいったいどのような仕方で予告してくれたのか、という点については、74歳にもなって自叙伝を書くことを企てたいまやっとつかめたのだった」(『わが人生の書』第47章、榎本恵美子訳、247ページ)。このように書いたジロラーモ・カルダーノは自らに守護霊がついていることを固く信じていました。彼の守護霊の実在への確信は、彼の父親のファツィオ・カルダーノから引き継がれたものです。カルダーノが物語っているところによると、父がパヴィアで診療のためにある家にとまったとき、深夜に目に見えないデーモンが彼の身体の中に入ろうと試みてきたそうです。この他にもファツィオは自分には馴染みのデーモン(守護霊のようなもの)がいて、それが適切な助言を与えてくれると語っていました。息子のジロラーモはしかし、父のいうデーモンが実在するかには懐疑的でした。彼はもちろんデーモン一般の存在を否定したわけではありません(冒頭の引用を見よ)。ただ父のあまりに正直であまりに不幸な気質が彼をして、何かを見たり聞いたりするより、自分が望むものを想像させているのではないかと疑っていたのです。この点でジロラーモはむしろ母親の語るデーモン譚に信頼をおいていました。ここから分かるように、カルダーノの両親は共にデーモンの存在を信じており、その話を繰り返し息子に聞かせていました。ジロラーモが熱心に守護霊との会話を試みていたことは、このような家庭環境を抜きには理解できません。