ライプニッツの霊魂論の変遷と栄養摂取論  Smith, “'Spirit is a Stomach'"

Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy (History of Science and Medicine Library / Scientific and Learned Cultures and Their Institutions)

Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy (History of Science and Medicine Library / Scientific and Learned Cultures and Their Institutions)

  • Justin E. H. Smith, “'Spirit is a Stomach': The Iatrochemical Roots of Leibniz's Theory of Corporeal Substance,” in Matter and Form in Early Modern Science and Philosophy, ed. Gideon Manning (Leiden: Brill, 2012), 203–224.

 ライプニッツは当初、有機体には壊すことのできない核のような部分があり、そこに霊魂が宿っていると考えていました。実体の花と彼が呼んだこの核は数学的な点のような部分に宿っているため壊すことができず、そのため植物の灰から植物が芽生えるということが起こりうるのだとされました。しかし後年のライプニッツはこの見解を修正し、むしろ有機体の全体に霊魂が行き渡っていると考えるようになりました。この論文はその変化の背後に、栄養摂取の問題に関してライプニッツの見解が進化したことがあると考えます。ライプニッツデカルトやトマス・ウィリスといった先行の学者たちにならって、有機体というのは機械であると考え、しかもそれを火で動く機械であるとみなしました。摂取された食物が発酵の過程を経て、熱へと変換されるというのです。こうして有機体は霊魂とは独立に環境から栄養をとり込んで自己を維持するものとなりました。アニマル・エコノミーの基礎に栄養摂取を置き、それを自律的なものととらえたことで、有機体の全体に霊魂がやどりながら、実は霊魂は有機体の維持には役割を果たさず、ただ予定調和により霊魂が有機体に結びついているという後年の学説が準備されたのです。