メランヒトンにおける摂理と天文学・占星術 Kusukawa, Transformation of Natural Philosophy, ch. 4, #1

The Transformation of Natural Phil (Ideas in Context)

The Transformation of Natural Phil (Ideas in Context)

  • Sachiko Kusukawa, The Transformation of Natural Philosophy: The Case of Philip Melanchthon (Cambridge: Cambridge University Press, 1995), 124–34.

 摂理の観念のもとにメランヒトンが自然哲学を組みかえていく模様を扱う第4章の冒頭部を読みました。1530年以降、ルターとメランヒトンは世界の終末が迫っているという意識を持つようになりました。そのようななか、メランヒトンは生涯ではじめて彗星を見ることになります。この彗星の意味を占星術師に尋ねた彼の手紙が残っています。彼はやがてこの彗星はなにか恐ろしいことが起ころうとしていることの予兆だと考えるようになりました。この彗星が現われたのは31年の8月で、そのちょうど同じ月にメランヒトン天文学占星術の研究を褒め称える文書を書いています。メランヒトンにとって天文学とは神の摂理を明らかにする学問であるので、その探求を否定する者は摂理を否定する無神論者でありエピクロス主義者です。また占星術も軽視すべきではありません。医学における予見が自然学として意味があるのと同じように、占星術による予見も自然学としてあつかわれるべきだというのです。天文学は天体の運動から、占星術は天体が地上に及ぼす効果から、それぞれ神の摂理を明らかにするものであるとメランヒトンは考えていました。メランヒトンがこのように星の研究にキリスト教上の意義を見出しはじめるのは、この1531年8月以降のことです。さらにこの動機はおよそ数学的諸学全般を推進する動機となっていきます。