中世の錬金術 Principe, The Secrets of Alchemy, ch. 3

The Secrets of Alchemy (Synthesis) (English Edition)

The Secrets of Alchemy (Synthesis) (English Edition)

  • Lawrence Principe, The Secrets of Alchemy (Chicago: University of Chicago Press, 2012), 51–82.

 またもや自分用のメモです。詳しくは柴田さんの記事をご覧ください。

 第3章はラテン中世世界での錬金術の発展を概観する。12世紀にアラビア語錬金術文献のラテン語訳がはじまり、13世紀には独自の作品が生みだされはじめた。代表的なものにゲベルによる『完全大全』がある。これはおそらくタラントのパウルによって書かれたもので、半ば粒子論的な物質理論のもとに、金属の変成を論じている。同じ頃、錬金術の可能性・不可能性をめぐって激しい議論が行われていた。かけられたするどい疑いに対抗するかたちで、錬金術文書における秘密主義と、(その正当性担保のため)錬金術キリスト教の教義との結合が進展する。またルペシッサのヨハネスは、アンチ・クライストの到来に備え健康を確保するために錬金術の成果を医薬として用いることができるとした。この医薬としてアルコール(第五精髄、命の水と呼ばれた)が用いられた。この他にルルスの名で書かれた錬金術文書が大量に流通することになる。こうして16世紀にいたるまでに錬金術はその二大目標である金属変成と医薬の製造を確立した。以後錬金術は黄金時代を迎えることになる。