失われた孤本を追え 折井、白井、豊島『ひですの教』

ひですの経

ひですの経

  • 折井善果、白井純、豊島正之釈文・解説『ひですの教』八木書店、2011年。

 17世紀の初頭(1613年ごろ)ルイス・デ・グラナダの『使徒信条入門』第1巻を日本語に抄訳した書物『ひですの教』が長崎で出版された。長崎にあったサンチアゴ病院の住院にあった印刷機で印刷されたものである。この書物のゆくえはその後20世紀初頭にいたるまで不明であった。それが1907年にベルリンの書店の目録に現れる。しかしそこからまた行方がわからなくなっていた。それが2009年にハーバード大学のホートン図書館に所蔵されていることが確認された。この現存する唯一の刊本を影刻し、釈文と解説を付したのが冒頭にあげた書物である。私には刊本や釈文を読むことはできないので、折井による解説だけを読む。なんだこれは。なぜウィリアム・タフト桂太郎松方正義、あげくのはてには明治天皇、皇后までがあらわれるのか。それはともかくこの解説からは、『ひですの教』が1906年までイタリアにあったこと、それがシカゴの実業家の手にわたり、さらにハーバードの卒業生に所有がうつり、最終的にこの卒業生の死後、大学に寄贈されたことがわかる。残る謎はそれがなんでまた2009年に発見されたのかということである。それは解説には書かれていない。経緯を知りたい?知りたい人は18日に行われるウェブレクチャーを見てください。そのあたりの事情を根堀り葉堀り聞く予定です。